丁度2年前にうちにやって来て、ダイニングルームに鎮座しているこちらの老婦人 御歳97歳――。
ずっとピアノが欲しいと思っていたのですが、まさかいきなりグランドピアノ(しかもこんなおばあさん!)を購入することになるとは思ってもみませんでした。
彼女との出会いは、もう運命としかいいようがありませんでした。
ヴィンテージ家具を探す時に、いつもロンドンのクラシファイドサイトもチェックするのですが、ある日そこに突然彼女が現れたのです。
”Bechstein Grand Piano1917 lovely tone!"
と。
お値段をみたら、購入を予定していたアップライトピアノと然程変わらず。
しかも、ベヒシュタイン。
更に、私の大好きなアールヌーヴォー期(ドイツ製だからユーゲントシュティールになるのかな。)のデザイン。
アップロードされた時間を見ると、2時間前。
でも、ピアノは基本的に古くなればなる程価値は下がるともいうし、どうなの?
と思い調べてみると、どうやらベヒシュタインに関しては「業者が修理をして価値を上げて高値で販売する」ということが日本でもイギリスでも行われている様子。
なんでも、このピアノに使われている木がもう採れないのだとか。
ちなみに、ベヒシュタイン修理のエキスパートと言われる工房はポーランドにあって、音楽関係の方に紹介して頂いたロンドンのピアノ専門店は、その仲介をしているそう。
そのお店のウェブサイトにも、これと全く同じモデルのリストア済みのピアノの写真が一例として紹介されていました。
「これはとにかく見に行かねば」と即刻夫に連絡し、売り主さんにアポ取りし、週末見に行きました。
辿り着いたのは、ごく普通のお宅。
玄関前に停められた改造中の古いベンツに目を奪われていると、中から 俳優のジェイク・ジレンホールそっくりの男前(でも髪はちょっと ボサボサ)が出て来て、ピアノを見せてくれました。
100年モノということで表面的な傷はあるものの、オーバーホール・調律済みで普通に弾く分には問題はないとのこと。
試弾させて貰うと、なんともまろやかで温もりのある美しい音色。
ただ、古いベヒシュタインは鍵盤が浅くてコントロールが難しく、隣に置かれていたヤマハのU3(私がかつて使用していたものと同 じタイプ)の方が断然弾き易かったです。
ところでこのお宅が本当にフツーのお宅というか、どうやら彼は2 階の部屋を3人位の学生達にシェアしているようで、私が試弾している間もバスローブ一枚に裸足の若者が階段を降りて来たかと 思えばキッチンから朝食を作る匂いが漂ってきたりして、まるで学生寮 のような雰囲気なのです。
試弾させて貰うと、なんともまろやかで温もりのある美しい音色。
ただ、古いベヒシュタインは鍵盤が浅くてコントロールが難しく、隣に置かれていたヤマハのU3(私がかつて使用していたものと同
ところでこのお宅が本当にフツーのお宅というか、どうやら彼は2
一階は殆どピアノに占拠された状態。
彼はピアノの先生をしているようなのですが、ピアノの種類や年代による鍵盤の長さや深さの違いなど 、ピアノの構造にやたら詳しいのです。(後になって工学系出身ということが判明。海外には、”以前はどこそこのオーケストラでヴァイオリン弾いてましたけど今は弁護士もやってます”なんて人が結構居るのです)
年頃は20代半ば位、地味でもの静かなタイプで、初めは少し話し 方が素っ気なかったので、ちょっと取っ付き難いタイプかな〜と思 っていたのですが、私がピアノを弾きだすと「奥に沢山楽譜がある から使ってね」と楽譜を引っ張りだしてきてくれたり、「売り物じ ゃないんだけど、奥の部屋のスタインウェイやボストンも弾いて行 かない?」と勧めてくれたりして、とっても親切で優しい青年なの です。
彼はピアノの先生をしているようなのですが、ピアノの種類や年代による鍵盤の長さや深さの違いなど
年頃は20代半ば位、地味でもの静かなタイプで、初めは少し話し
で、奥の部屋に入ってビックリ。
なんと100年前の見事なスタインウェイのグランドピアノが鎮
なんでもオークションで競り落とした代物らしく、キラキラとした美しい響きで鳥肌が立ちました。
どうやらこの部屋が彼のプライベートルームで、狭い部屋に2台の ピアノと楽譜の山に埋もれて(部屋の面積の8〜9割はピアノが占めている)生活している様子。
彼がベヒシュタインを手放す理由は、これを購入した直後にスタインウェイに出会ってしまったからなのだそう。
彼がベヒシュタインを手放す理由は、これを購入した直後にスタインウェイに出会ってしまったからなのだそう。
物を見る目を肥やし、ピアノの売り買いや部屋の賃貸 でせっせと資産をやりくりしている様子で、なんだか『ユダヤ人大富豪の教え』とかに出て来そうな感じ。
まだ若いのに浮き足立った感じがなく、地味で真面目で賢くて自分 の世界を持っていて、なかなか好感が持てました。
それにしても、まさかこのような場所で(失礼!)これだけのピアノを弾き比べ 出来るなんて思いもよらず、この日は帰宅してからも暫く興奮状態でした。
それにしても、まさかこのような場所で(失礼!)これだけのピアノを弾き比べ
さて、そんな彼の元からやって来たベヒシュタイン。
彼女が来てから素敵なピアノの先生との出会いがあり、子供達に漸くピアノを習わせることが出来るようになった訳なのですが、ついでに私もお世話になることになり(レッスンを受けるのは十数年振り!)生活に彩りを与えて貰っています。
彼女が来てから素敵なピアノの先生との出会いがあり、子供達に漸くピアノを習わせることが出来るようになった訳なのですが、ついでに私もお世話になることになり(レッスンを受けるのは十数年振り!)生活に彩りを与えて貰っています。