2013年9月17日火曜日

こどものサマードレス




去年と今年の夏、リバティのセールで目的もなく手に入れた生地。
生地を棚に積み重ねただけで絵になる様子に一人ほくそ笑み、自己満足に浸るばかりでなかなか作品が生まれないたのですが、この夏ついに重い腰をあげて娘達のサマードレスを作りました。


ブログであれこれ作る私をご覧の方の中には、裁縫が得意だと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は裁縫と編み物が苦手なわたくし。
高校の家庭科の授業でエプロンさえまともに作れず、居残りで家庭科室のミシンを数台狂わせて迷惑をかけまくった女なのです。
編み物も、家庭科の課題で作ったマフラー5〜60センチが最高記録。

その私が、いきなりサマードレスに挑戦です。
しかも、型紙は手持ちのワンピースを元に自作!
いくらシンプルなデザインとはいえ、裁縫初心者でなんと無謀な!!

「ドレスじゃなくて、やっぱりキャミソールでもいい?」
という私に、
「いや!サマードレスがいい!」
と娘。

「この上等な生地を無駄にしてしまったらどうしよう。。。」

内心ひやひやしながら裁断し、洗濯にも耐えられるよう、ちょっと上等な子供服の縫製を真似しました。(一応、慎重派ではある)

人間、やる気になれば出来るものですね。
ミシンの調子も良く、娘二人分のワンピースを4時間で作り上げました。
自分のイメージしたものが形になることが、こんなに楽しいとは!!

これで「お気に入りの生地で娘達のお揃いワンピースを作る」という密かな夢が遂に実現しました。
母親になったことで、モチベーションが上がったことは間違いありません。

先日、娘達にこれを着せてナショナルトラストの庭園へお出かけしたのですが、すれ違うおばさま、おばあさま方が「可愛い」と微笑んで下さった時の満足感といったら。。。

冬に向けて、家の中での楽しみにお裁縫が加わることに、、なるかも!?












2013年9月5日木曜日

Musée de l'École de Nancy ③


ステンドグラスから柔らかな光が差し込む階段を登って二階へ。



二階の窓際に設えられた棚には、ガレによる花器がずらりと並べられています。
自然光を受けて煌めくガラスたちは、ショーケースの中でライトで照らされた状態で見るのとはまたひと味違う美しさでした。

     
  

  

    

ガレの作品は、年代によってスタイルが変遷していくところが面白いです。
1870年代後半(30代前半頃)は日本や中国の作品をそのまま転用したようなものが多いのですが、これが徐々に西洋スタイルと融合してゆき、後期になると昆虫や植物の形態をそのまま表現した作品となってゆきます。




ガレが死の直前に製作したベッド『曙と黄昏』。
ヘッドボードには黄昏時に蝶が落ちて行く様子、フットボードには蝶が舞い上がる姿が施されています。
(蝶というより蛾のように見えますが、フランスでは蝶と蛾を区別しないようです)

グロテスクで薄気味悪い印象を受ける方もおられるかもしれませんが、私は今回、13年前にこれを見た時とは違う感動を覚えました。
というのも、つい数ヶ月前、「蝶はあの世とこの世を繋ぐシンボルである」とある本で読んだところだったからです。

ガレがそのことを知っていたのかどうかは定かではありませんが、この時既に白血病を煩い死を予感していたガレは、自身のあの世への旅を前に「死と再生」の意味合いをこの作品に込めていたのではないかと思います。
晩年の作品には生物の命の儚さを表現したものが数多く、「もののあはれ」(人生の機微や四季の自然の移ろいなどに触れた時に感ずる優美で繊細なしみじみとした情趣を意味する)を理解していたのでは、と言われるガレだけに、「輪廻転生」といった東洋思想をも理解していたのではないかと、この作品を通して感じました。






ステンドグラスが施された優雅な浴室。
浴槽も立派な美術品です。




美しく設えられた部屋の数々。
壁やカーテンの色合いがマホガニーの家具と見事に調和しているところなど、流石フランス人、魅せ方が心憎いです。
光の入れ方も絶妙です。

この美術館の魅力は、19世紀末の時代に誘われたような感覚を味わいながら、作品との対話に集中出来るところだと思います。
どこか摩訶不思議で幻想的なこの空間は、異次元に迷い込んだような気分にさえなります。

いつの日か、またこの世界を訪れることが出来ますように。。。




2013年9月4日水曜日

Musée de l'École de Nancy ②


19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォー様式。
草花や生物など、自然界のモチーフや曲線を施したデザインが特徴的で、多くの建築、家具、工芸品などに取り入れられました。

ここは元々はアール・ヌーヴォー、ナンシー派のパトロンであったコルバン氏の私邸で、邸宅内全体に作品(家具や工芸品)がインテリアとして配置、展示されています。



寄木象嵌加工が見事なこちらのピアノは、ルイ・マジョレルによるもの。
私が一番目を奪われたのはピアノの足。

普通のグランドピアノは三本足が床と垂直になっていますが、これは内側に向かって曲線を描く形になっていて、重心の取り方が絶妙です。

通常グランドピアノを運ぶ時は足を取り外せるようになっていますが、このピアノの足はどう見ても外せそうにありませんよね。
一体どうやって運ぶのやら。。。



こちらはアール・ヌーヴォーの代表的作家、エミール・ガレによるもの。
日本ではガラス工芸で有名なガレですが、ここには家具も多く展示されています。

ガレの作品はジャポニズムの影響を受けたものが多く、こちらの棚も日本の違い棚を彷彿とさせる造りになっています。
当時ナンシーに留学していた植物・地質学者で日本画家でもあった高島北海との交流があり、北海が細密に描いた植物の写生画から多くのインスピレーションを得たと言われるだけあって、ガレの表現するジャポニズムはリアリティに溢れ、日本人の私も思わず郷愁にかられてしまいます。







このピアノは、オーギュスト・マジョレルによるもの。
Mangeot Freresという昔(1830年〜90年頃)のフランスのピアノメーカーとの共作のようです。

私事ですが、去年古いピアノを手に入れまして、それ以来古いピアノと出会うと気になってあれこれ見てしまう癖があります。



アール・ヌーヴォーは日本でも流行しましたが、日本美術と西洋美術が自然のモチーフを通して見事に融合した作品を見ていると、異文化をリスペクトし合う芸術家達の心が垣間みられ、そこに「平和」を感じずにいられません。



ヴァランによる見事なダイニングルーム。

以前訪れたスペインのカサ・バトリョもそうでしたが、こうした空間の中に居ると夢幻の世界に迷い込んだような心地になります。



一階奥の部屋はガレのガラス工芸品が展示されています。







文様を象った色ガラスを表面に貼付けるアプリカッシオン、ガラスの表面を削って彫刻するグラヴュール、顔料で絵付けするエナメル彩など、様々な技法を用いて作られた作品の数々。


ガラスに溶け込んだ躍動感溢れる昆虫や植物、海洋生物に、小学生の息子も釘付けでした。


今回は一階をご紹介しましたが、次回は二階の写真をご覧頂きます。







2013年9月1日日曜日

Musée de l'École de Nancy ①


当初はルクセンブルクからストラスブールに直行する予定だったのですが、学生時代に1人で訪れた思い出の地ナンシー(フランス)の街に寄ることに。

あれは今から十数年も前のこと。
はるばる海を越え、パリから列車でおよそ3時間かけてナンシーに辿り着くも、英語が殆ど通じないこの街で道に迷い、地図片手に彷徨っているところを親切な老夫婦にお声掛け頂き、車でこのMusée de l'École de Nancy(ナンシー派美術館)まで連れて来て頂いたのです。
長い道のりを経て漸く辿り着いたこの小さな美術館は、私にとってはそれはもう夢のような世界で、感動と興奮で身が打ち震えました。

デジカメが一般に普及しだして間もないあの頃、学生の身分でそのような代物は持っておらず、使い捨てカメラもパリで使い果たし、この美術館で一枚も写真を撮れなかったことが悔やまれてなりませんでした。
胸に焼き付けたこの場所を時折思い出しては「いつか再び訪れたい」と願っていたのですが、その夢が漸く実現しました。
独身時代の貯金で手に入れた一眼レフを携え、いざ参上!! 笑
薄暗い美術館もなんのその〜♪
ノーフラッシュで思う存分撮らせて頂きました。

ここはじっくりご覧頂きたい(個人的趣味により熱の入りようが違う)ので、2〜3回に分けて、まずはお庭からご紹介させて頂きます。




ガラスの傘が被せられたアール・ヌーヴォー様式の円筒状の建物は、なんと水族館。







残念ながら現在は中に入ることが出来ませんが、ちょこっと窓から覗き見。
恐らくかつてはこの螺旋階段が地下まで続いていて、地下の窓からすぐ隣の池の中の鯉が見られるようになっていたのでは、、、と推測。


(wikipediaより)

と思っていたら、中のステンドグラスの画像を発見!
Wikipediaより拝借致しました。

それにしても、100年以上前の建物にしては斬新な発想ですよね。
嗚呼、当時にタイムスリップしてみたい。
今、私の頭の中ではサン・サースの『動物の謝肉祭/水族館』がグルグル回っています。




前回訪れた時は真冬で物寂しい庭だったのが、今回は真夏ということで花と緑が溢れていました。







アール・ヌーヴォー、ナンシー派の代表的な作家、ルイ・マジョレル。
館内にはマジョレルによる作品も多く展示されていました。
次回は美術館内をご案内します。