2013年9月4日水曜日

Musée de l'École de Nancy ②


19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォー様式。
草花や生物など、自然界のモチーフや曲線を施したデザインが特徴的で、多くの建築、家具、工芸品などに取り入れられました。

ここは元々はアール・ヌーヴォー、ナンシー派のパトロンであったコルバン氏の私邸で、邸宅内全体に作品(家具や工芸品)がインテリアとして配置、展示されています。



寄木象嵌加工が見事なこちらのピアノは、ルイ・マジョレルによるもの。
私が一番目を奪われたのはピアノの足。

普通のグランドピアノは三本足が床と垂直になっていますが、これは内側に向かって曲線を描く形になっていて、重心の取り方が絶妙です。

通常グランドピアノを運ぶ時は足を取り外せるようになっていますが、このピアノの足はどう見ても外せそうにありませんよね。
一体どうやって運ぶのやら。。。



こちらはアール・ヌーヴォーの代表的作家、エミール・ガレによるもの。
日本ではガラス工芸で有名なガレですが、ここには家具も多く展示されています。

ガレの作品はジャポニズムの影響を受けたものが多く、こちらの棚も日本の違い棚を彷彿とさせる造りになっています。
当時ナンシーに留学していた植物・地質学者で日本画家でもあった高島北海との交流があり、北海が細密に描いた植物の写生画から多くのインスピレーションを得たと言われるだけあって、ガレの表現するジャポニズムはリアリティに溢れ、日本人の私も思わず郷愁にかられてしまいます。







このピアノは、オーギュスト・マジョレルによるもの。
Mangeot Freresという昔(1830年〜90年頃)のフランスのピアノメーカーとの共作のようです。

私事ですが、去年古いピアノを手に入れまして、それ以来古いピアノと出会うと気になってあれこれ見てしまう癖があります。



アール・ヌーヴォーは日本でも流行しましたが、日本美術と西洋美術が自然のモチーフを通して見事に融合した作品を見ていると、異文化をリスペクトし合う芸術家達の心が垣間みられ、そこに「平和」を感じずにいられません。



ヴァランによる見事なダイニングルーム。

以前訪れたスペインのカサ・バトリョもそうでしたが、こうした空間の中に居ると夢幻の世界に迷い込んだような心地になります。



一階奥の部屋はガレのガラス工芸品が展示されています。







文様を象った色ガラスを表面に貼付けるアプリカッシオン、ガラスの表面を削って彫刻するグラヴュール、顔料で絵付けするエナメル彩など、様々な技法を用いて作られた作品の数々。


ガラスに溶け込んだ躍動感溢れる昆虫や植物、海洋生物に、小学生の息子も釘付けでした。


今回は一階をご紹介しましたが、次回は二階の写真をご覧頂きます。